KACCOイベント（2022年度）

この度、京都市文化芸術総合相談窓口（KACCO）では、アーティストの田中功起氏と文化研究者の山本浩貴氏による対談「アートのインフラを再発明する」を開催します。

現代美術の歴史では、1960年代後半より制度批判（institutional critique）と呼ばれる潮流が発生します。この流れは、マルセル・ブロータース、ハンス・ハーケ、ダニエル・ビュラン、エイドリアン・パイパーといった先駆者たちから始まり、70年代から80年代にかけてマーサ・ロスラーやアンドレア・フレーザーなどによる展開を経由し、90年代以降の「関係性の美学」をめぐるニコラ・ブリオーやクレア・ビショップの議論にまで繋がっています。アートの制度批判は、権威化した美術館制度ひいては芸術の制度性そのものに異議申し立てを行う一連の実践であり、現在に至るまで現代美術の主要な議題であり続けています。しかし反面、制度批判が制度を強化し延命させるという批判が繰り返しなされ、さらにはその批判すらも制度の一部なのではないかという批判まで提出されるなど、自己撞着的な現代美術の閉鎖性を示す傾向であるとも考えられます。

昨年開催されたドクメンタ15では、グローバルサウスからの多声的なアプローチが欧米中心的な現代美術制度への挑戦として大きな話題となりました。国内に目を向けると「表現の現場調査団」や田中も参加した「Kyoto Interchange」は、展覧会やアートプロジェクトの範疇を超えた活動を展開しています。これらはいずれもインフラ＝土台＝下部構造から芸術制度を変容させる可能性を内包しています。単なる制度批判を超えて、アートのインフラを根本的に考え直すことができるのではないか。具体的、現実的な生産実践や労働倫理を前提としたオープンな現代美術制度を構想すべきではないか。本イベントでは、これらの問いをめぐって田中と山本による刺激的な対話が展開されます。

田中功起（たなか・こおき）

アーティスト。田中は映像やインスタレーション、介入的なプロジェクトなどの多様な芸術実践を通して、日常に潜む複数のコンテクストを視覚化してきた。近年では、人と人との協働に焦点を当てた作品を制作する。参加者たちに非日常的なタスクを集団的にこなすことを求め、そのありえない状況に直面している人々が無意識に示す振る舞いを記録する。それは、小さな社会や一時的な共同体のなかに生じる、集団の力学を明らかにしようとする試みである。主な展覧会にあいちトリエンナーレ（2019）、ミュンスター彫刻プロジェクト（2017）、ヴェネチア・ビエンナーレ（2017）。

山本浩貴（やまもと・ひろき）

1986年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、ロンドン芸術大学にて修士号・博士号取得。香港理工大学ポストドクトラルフェロー、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教を経て、2021年より金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科芸術学専攻講師。単著に『現代美術史　欧米、日本、トランスナショナル』（中央公論新社、2019年)、『ポスト人新世の芸術』（美術出版社、2022年）。

主催：京都市文化芸術総合相談窓口 [KACCO]

KACCOでは文化芸術関係者がさまざまな相談を寄せることのできる窓口を常時開設しています。この度、通常の相談ではなく、その時その場でその相手にしかできない「対話」を可能にする、1日限定の『ゲスト相談員の日』を月1回のペースで開催する運びとなりました。第一回目のゲスト相談員として、現代美術や映像分野で活躍されているアーティストであり映画監督の荒木悠さんをお迎えします。

荒木さんは、高校時代をご家族の仕事の都合によりアメリカで過ごされました。全く英語が話せない状態からの言語習得、異文化との出会いを思春期に経験された荒木さんの作品には、誤訳やズレといったテーマがユーモアをまとって現れます。

また、ご自身のことを「大学では彫刻に挫折、翻訳業を廃業した末に辿り着いた映像インスタレーションを主な表現媒体として制作を続けている」と語る言葉からは、弱みを魅力に変換していく強さを感じます。それは、ものの見方をずらしたり裏返したりする現代美術の力とも言えるかもしれません。荒木さんとゆるくお話してみたら、悩みも普段とは違う角度から眺められるかも…。

※相談はKACCOスタッフも同席します。会場は半オープンスペースです。予めご了承ください。

※不安なこと（筆談で相談できますか？子連れでもいい？など）が、ありましたら事前にご連絡ください。

荒木悠さんプロフィール

1985年生まれ。米国ワシントン大学で彫刻を、東京藝術大学では映像を学ぶ。日英の通訳業を挫折後、誤訳に着目した制作を始める。

近年の主な展覧会にシドニーオペラハウス（2021年）、ポーラ美術館（2020年）、資生堂ギャラリー（2019年）、アートソンジェ・センター（ソウル、2019年）など。上映は、ロンドンICA（2021年）、マルセイユ国際映画祭（2021年）、ロッテルダム国際映画祭（2018年、2020年）など多数。

2017年に光州のアジアカルチャーセンター、2018年にはアムステルダムのライクスアカデミーにゲスト・レジデントとし滞在。2019年はフューチャージェネレーション・アートプライズのファイナリストに選出される。恵比寿映像祭2023「コミッション・プロジェクト」に参加中。http://yuaraki.com/

主催：京都市文化芸術総合相談窓口 [KACCO]

確定申告の時期が近づいています。文化芸術関係のお仕事をされている個人事業主の皆さんや、収益事業を行っているアーティストや任意団体を運営している皆さん、確定申告の準備は進んでいますか？

令和4年度分の確定申告期限は令和5年3月15日です。事前準備を進めながら、不安な部分、わからない部分を税理士さんに質問してみませんか？

スムーズに確定申告を行えるようサポートします。自分のケースでは確定申告が必要かどうか、判断しかねているかたも、質問いただけます。13時から作業用スペースを開放していますので、確定申告の準備作業を行うだけでも構いません。ぜひお気軽にご参加ください。
※相談会では確定申告の受付は行いません。後日税務署等の受付会場、e-Taxなどで申告書を提出していただく必要があります。

※KACCOでは専門家への初回相談の機会を無料で提供しており、相談会開催時に限らず随時、税理士・会計士への相談が可能です。ご希望の方は別途お問い合わせください。

何となく気分が落ち込んだり、普段はしないミスをしたりといった不調を感じていませんか？

文化芸術活動を行うための環境を維持することは、さまざまな苦労が伴うもので、つい自分のことを後回しにしがちな方を多く見受けます。いつのまにか無理をし過ぎていることはないでしょうか。

本相談会では、臨床心理の専門家がマンツーマンでお話しを伺い、「他者へ相談すること」のハードルを少しでも下げることを目指します。

相談時間の中で問題解決そのものを目的とするのではなく、話をすることで自身の思考が整理され、問題に対して違った見方が可能となったり、焦点を絞ってクリアに考えることが出来るかもしれません。

「カウンセリングを利用してみたいけれども、どこに行けばよいかわからない」「きっかけを逃していた」といった方にとっての、初めての心理相談の機会として活用いただけます。この機会にぜひお気軽にお申し込みください。

※開催月以外も随時、個別対応が可能です。別途相談窓口までお問い合わせください。
※前回お申し込みいただいた方は、今回ご参加いただけません。

KACCOでは、文化芸術活動の支援を助成金・補助金に求める方からの問い合わせや相談を日々お受けしています。申請を重ねることで、プログラムとの相性や、端的に企画を説明する文章の書き方等を会得していくものですが、初心者にはわからないことが多く、足踏みをしてしまう方も多いと思います。そこで、比較的、申請経験が少ない方向けに、公募助成団体による説明会を行います。第1回は、アーツサポート関西・おおさか創造千島財団 編です。

いずれも民間の財団で、現在、2023年度に行う事業を対象とした公募助成を行っており（1月上旬締切）、申請書類や報告書類の書式が比較的シンプルで、申請経験が少ない方でも挑戦しやすいプログラムであることが特徴です。

説明のあとは、質疑応答の時間も設けます。わからない点はこの機会に解消し、企画の充実にお役立てください。

・アーツサポート関西 2023年度公募助成（1月10日締切）についてはこちら
・おおさか創造千島財団　2023年度公募助成（1月9日締切）についてはこちら